美容クリニックのSEO対策を専門家が解説!失敗を防ぐポイントは?

美容クリニックの分野では、広告費の高騰や法規制の強化が進んでおり、信頼性の高い情報を自院から発信できるかどうかが来院数に大きく影響する時代になっています。

SEO対策に取り組むことでユーザーから選ばれるサイトとなり、競合クリニックとの差別化や安定した集客基盤の確立が可能です。この記事では、美容クリニックにSEO対策が必要な理由や具体的な施策、失敗を防ぐポイントなどを分かりやすく解説します。

美容クリニックはSEO対策が必要不可欠!?

美容クリニック業界は年々競争が激化しており、集客の安定化を図るにはSEO(Search Engine Optimization 検索エンジン最適化)対策が必要不可欠です。

ここでは、なぜ美容クリニックにSEO対策が重要なのか、その理由を2つに分けて解説します。

・市場が拡大傾向にあり差別化が欠かせない
・広告に依存せず集客ができる

それぞれ詳しくみていきましょう。

市場が拡大傾向にあり差別化が欠かせない

美容医療市場は年々拡大しており、競合クリニックも増加傾向にあるため、マーケティング施策の強化が重要になっています。

厚生労働省の「美容医療に関する現状について」によると、美容医療の施術件数は2020年に一時的な減少があったものの、2022年には373.2万件にまで大きく回復しました。特に非外科的施術の伸びが目立っています。

総施術件数(万件) 外科的手技(万件) 非外科的手技(万件)
2019年 123.0 19.0 104.0
2020年 47.3 8.5 38.8
2021年 202.8 28.0 174.9
2022年 373.2 85.8 287.4

また、同資料によると美容医療に従事する医師数も年々増加しており、クリニック間の競争が激化している状況です。他院との差別化を図らなければ、ウェブ上で埋もれてしまい、集客の機会損失につながる可能性が高まります。

出典:美容医療に関する現状について|厚生労働省

広告に依存せず集客ができる

広告やSEOは、キーワードを軸にユーザーの悩みに寄り添った情報発信をする、差別化につながるマーケティング施策です。なかでもSEOは、美容業界において広告だけに頼らず、中長期の集客効果を得るために必要不可欠な施策といえます。

美容クリニックの患者は容姿にコンプレックスを抱えており、他人に相談しづらいため、まずネットで検索を行う傾向があります。例えば「鼻を整えたい」「クマを消す方法」などのキーワードによる検索が一例です。

こうしたユーザーのニーズに応えるためには、キーワードに基づき細かいターゲティングができるリスティング広告やSEOが効果的です。

ただし、広告は即効性がある反面、美容関連のキーワードはクリック単価が高騰しており、1クリック3,000円を超えることも珍しくありません。出稿を止めれば効果もなくなるため、長期的な費用対効果に課題があります。

一方、SEOは成果が出るまでに時間はかかりますが、一度上位表示されれば、その後は安定的な流入が見込めます。また、「シミ取りレーザーの効果」や「ダーマペンのダウンタイム」などニッチなキーワードでは、自社の強みを活かした専門的なコンテンツで差別化が可能です。

広告とSEOを併用することで、即効性と持続性を兼ね備えた集客基盤を構築できます。

美容クリニックで実施するSEO対策の具体的な内容

美容クリニックがSEO対策を行う際は、「コンテンツSEO」「内部施策」「外部施策」の3つを軸に進めることが重要です。サイト評価に関わる重要な施策であり、いずれかの視点が欠けると検索順位が向上しにくくなります。

それぞれの具体的な内容と施策例は、以下のとおりです。

対策 施策の例
コンテンツSEO

・「二重埋没 渋谷」などの「施術名+地名」のページを通じて、自院へ案内する
・「シミ 改善」などの悩みに沿った記事によって自院の認知度を高める
・医師監修のコラムを作成し、サイトやオウンドメディアの信頼性を高める

内部施策

・コラムからサービス紹介ページへの内部リンクを設置し、予約を促す
・医院名や地名、特徴などをタイトルや見出しのタグに明記する
・院内や施術の画像を圧縮して、サイトの表示速度を改善する

外部施策

・美容メディアに施術や機器に関する専門的な記事を寄稿する
・地域情報サイトやエリア特化メディアにクリニック情報の掲載を依頼する
・SNSで新規コラムやキャンペーンなどの情報を発信する

3つの施策を組み合わせて実施することで、検索エンジンやユーザーからの評価が高まり、安定的な集客が実現できます。

美容クリニックがSEO対策で狙うべきキーワード

美容クリニックがSEO対策で成果を上げるには、検索ボリュームや集客効果を意識した多角的なキーワード選定が欠かせません。SEO対策の目的やキーワードごとの性質を踏まえて、戦略を立てましょう。

キーワード種別 具体例
施術名+エリア

・二重埋没 渋谷
・ヒアルロン酸注射 名古屋
・ボトックス 大阪
・ポテンツァ 福岡

悩みや症状

・たるみ
・シミ
・毛穴
・ニキビ跡

行動意欲フレーズ

・鼻を高くしたい
・ほくろを取りたい
・肌をきれいにしたい
・輪郭をシャープにしたい

機器名や商材名

・スネコス注射
・アレキサンドライトレーザー
・ウルトラセルQ+
・サーマクールFLX

ニッチワード

・あごの梅干しジワ
・振り袖肉
・口角のたるみ
・ガミースマイル治療

優先度【高】の施策

最優先で対策すべきは「施術名+地域名」のキーワードです。「実際に施術を受けたい」と考えているユーザーが検索するため、来院につながりやすく集客効果が高くなります。

優先度【中】の施策

次に対策すべきは「悩みや症状」と「行動意欲フレーズ」です。施術名を知らないユーザーに向けて記事を作ることで、認知から比較検討、予約までの導線を築けます。

リソースに余裕があれば

リソースに余裕があれば「機器名や商材名」「ニッチワード」も狙ってみましょう。競合が少ないため上位表示されやすく、自院の強みと組み合わせることで差別化にもつながります。

目的やターゲットに応じて複数のキーワードを組み合わせ、集客効果を最大化することが成功の鍵です。

失敗を防ぐ!美容クリニックのSEO対策のポイント

ここでは、美容クリニックがSEO対策で成果を上げるために押さえておくべきポイントを3つ紹介します。

・医療広告ガイドラインに準拠した運用を行う
・1次情報や症例実績を活用して独自性を出す
・医師やスタッフの紹介ページを整備して信頼性を伝える

とくに医療分野は法律やガイドラインの制約が多く、一般の店舗やサービスと同じ手法ではトラブルになる可能性があります。それぞれ詳しくみていきましょう。

医療広告ガイドラインに準拠した運用を行う

SEO対策を行う際も、医療広告ガイドラインや薬機法を遵守して、サイト全体やコンテンツの信頼性を高めることが重要です。違反した場合は検索順位の低下にとどまらず、営業停止や行政指導、公表などの重いペナルティを受ける恐れがあります。

厚生労働省の令和5年度ネットパトロール概況によると、医療広告に関する通報件数は2,214件と、全通報件数の半数近くを占めています。前年の4,646件からは減少したものの、医療分野の広告は今もなお消費者トラブルの温床となっている状況です。

とくに注意すべきガイドラインの項目は、以下のとおりです。

項目 禁止・注意事項
誇大表現

「100%成功」「絶対に安全」「必ず効果あり」など、根拠のない断定表現は禁止

ビフォーアフター画像

実際の患者であること、経過や撮影条件の説明、効果には個人差がある旨の明記が必要。症例の客観性を確保しない限り広告掲載不可

医師紹介

経歴や資格、所属学会などはすべて事実でなければならない。誤認を招く記載(例:学会員を専門医と誤認させる)は禁止

費用表示

価格を表示する場合は「○○円〜」などの不明瞭な記載は禁止。施術にかかるすべての費用(麻酔代・診察料など)を明記

体験談・口コミ

広告では原則禁止。体験談の掲載は「誘引性がない場合」に限定され、謝礼や指示による投稿は禁止

一時的な集客効果を狙ってルールを逸脱するのではなく、長期的な信頼構築を見据えた正確かつ誠実な情報発信を心掛けましょう。

出典:ネットパトロール事業について(令和5年度)
出典:医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針 (医療広告ガイドライン)
出典:医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 (第5版)

1次情報や症例実績を活用して独自性を出す

独自性のあるコンテンツの発信により、検索エンジンからの評価が高まり、検索上位に表示されやすくなります。検索エンジンは汎用的な内容よりも、コンテンツ制作者の実体験や専門的な知見を高く評価する傾向があるためです。

なかでも、1次情報や症例実績は、美容クリニックならではの強みを活かせる重要な要素です。例えば、以下のような要素を取り入れるとユーザーの信頼獲得につながります。

・症例写真
・医師自身の経験談
・院内で制作したオリジナル動画

ただし、症例写真を掲載する際には、医療広告ガイドラインに基づき以下の3点を明記する必要があります。

・治療内容の詳細
・施術期間と費用
・副作用とリスクの説明

また、医薬品を解説する場合は、製薬会社の添付文書や厚生労働省の通知などの公式情報を引用することで信頼性が高まり、SEO評価も向上します。

医師やスタッフの紹介ページを整備して信頼性を伝える

医師やスタッフの経歴・実績などを充実させたページを設けることで、検索エンジンやユーザーから信頼されるサイトになり、問い合わせや予約の促進につながります。

美容クリニックは、情報の正確性が重視されるYMYL(Your Money or Your Life/Google検索品質評価ガイドラインで示されている特別な分野のこと)領域です。そのため、サイトやコンテンツのE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の充実がとくに求められます。

紹介ページの掲載内容としては、以下のような基本情報を可能な限り詳しく記載すると効果的です。

・氏名と役職
・顔写真
・経歴(学歴や研修先病院、勤務歴など)
・所属学会
・各種資格
・得意な施術内容
・研究実績やメディア出演歴

加えて、コンテンツの末尾に「監修:●●医師(○○学会所属)」といった監修表記を入れることで、ページ全体の信頼性をより強化できます。

自社でのSEO対策が難しい場合は、専門会社に制作を外注するのも選択肢のひとつです。医療分野の支援実績をもつ制作会社であれば、E-E-A-Tの強化につながるサイトやコンテンツの制作が期待できます。

まとめ

広告費の高騰や競合の激化が進む美容クリニック業界において、SEO対策は安定した集客を実現するために欠かせない施策です。成約につながりやすいキーワードを軸に、コンテンツSEO・内部施策・外部施策をバランス良く進める必要があります。

また、美容医療は医療広告ガイドラインの対象となるため、法令に準拠した発信が求められます。ガイドラインを遵守しながら、信頼性や専門性を高めるコンテンツを発信し、SEO評価とユーザーの来院意欲を着実に向上させていきましょう。