失敗しないSaaS企業のSEO対策とは?リード獲得のポイントを紹介

SaaS企業にとってSEOは、集客や認知拡大だけでなく、長期契約につながる有効な手段です。 業務課題の解決策を求めて検索するユーザーと、SaaSの提供価値は親和性が高く、SEOで成約見込みのあるリードを効率的に獲得できます。 本記事では、SaaS企業がSEOを強化すべき理由や進め方のポイントを、初心者にもわかりやすく解説します。

SaaS企業がSEO対策を行うべき理由

SaaSは、定額で継続的に利用してもらうビジネスモデルのため、新規顧客を増やすことが安定した収益につながります。

特にBtoB向けのSaaSでは、導入にあたり複数の決裁者が関与するため、検討プロセスが長く慎重になりがちです。こうした背景から、自社サービスの価値をわかりやすく伝えるマーケティング施策が不可欠です。

ここではSEO対策を行うことで、どのような点に有効なのか解説していきます。

認知拡大

SaaS業界では、有名企業が多数存在し、マーケティングに積極的に取り組んでいる企業も少なくありません。その中で、自社サービスの認知を拡大していくには、SEOを含むデジタルマーケティング施策が不可欠です。

数あるマーケティング施策のなかでも、SEOは「情報収集」から「比較検討」フェーズにいるユーザーまで、広い範囲にアプローチできます。例えば、以下のような検索キーワードを想定してみましょう。

・社内チャット 導入 効果
・業務効率化 ツール おすすめ

SEOに取り組むことで、検索順位やセッション数の向上が期待でき、これらは認知拡大の重要な指標となります。

また、こうしたキーワードは、まさにSaaS導入を検討している段階のユーザーが検索するものです。まだ自社サービスを知らないユーザーにも、興味を持ってもらうきっかけになります。

リード獲得

BtoB領域では、見込み顧客がWeb上で情報収集を行う傾向が強いため、検索上位を獲得することで「営業をかけなくても見込み顧客が自ら情報を取りに来てくれる状態」をつくれます。

Web広告は即効性がある一方で、費用対効果が悪化しやすく、停止すれば効果も止まります。一方、SEOで上位表示されれば中長期的に集客が継続し、リード獲得の柱となってくれます。

SaaS企業が実施するSEO対策の基本方針

SaaS企業が継続的にリードを獲得し、売上につなげていくためには、検索を通じて自社を見つけてもらい、興味を持った見込み顧客と関係を築いていくことが欠かせません。

特にSaaS企業が押さえておくべきSEOの基本方針は、次の2つに集約されます。

・オウンドメディアでコンテンツSEOを活用する
・ダウンロードコンテンツで見込み顧客を育てる

この2つの方針を理解し実践することで、単なるアクセス獲得にとどまらず興味を持ったユーザーを、受注へと導く仕組みをつくることができます。

ここから、それぞれのポイントを詳しく解説していきます。

オウンドメディアでコンテンツSEOを活用する

SaaS企業が自社のサービスをより多くの見込み顧客に届けるためには、オウンドメディアを通じたコンテンツSEOの活用が非常に効果的です。

コンテンツSEOとは、ユーザーの疑問や悩みに応える質の高いコンテンツを継続的に発信し、検索エンジンからの自然流入を増やす施策です。オウンドメディアで継続的に有益な記事を公開することで、まだ自社を知らない層に対してもアプローチが可能となり、認知拡大につながります。

成果を出すためには、まず自社サービスのターゲット像(ペルソナ)を明確にし、その人たちが抱える課題を深く理解することが重要です。

そして、その課題を解決する内容の記事を制作することで、検索ユーザーにとって価値のある情報源として信頼を得ることができます。

例えば、「業務を効率化したいが、どのSaaSを選べばいいか分からない」というユーザーを想定した場合は、

・SaaS導入前に押さえるべき3つのポイント
・失敗しないSaaSの選び方
・◯◯業界でSaaSを活用した成功事例

といったテーマの記事を用意し、具体的な課題解決のヒントを提示します。あわせて自社サービスの導入効果や事例も紹介することで、「情報提供 → 信頼形成 → 導入検討」という自然な流れをつくることができます。

このように、ユーザー視点に立ったコンテンツを継続して発信することで、集客・信頼獲得・検討喚起を一貫して担えるのが、オウンドメディアの強みです。

ダウンロードコンテンツで見込み顧客を育てる

オウンドメディアで集めた見込み顧客を、そのまま放置していては契約にはつながりません。関心を持ったユーザーに、さらに深い情報を提供するために活用したいのが「ダウンロードコンテンツ」です。

特にBtoB領域のSaaS企業では、担当者がその場ですぐにトライアルや契約を決断できないケースが多く、複数名での検討・上長決裁を経て導入が決まるという流れが一般的です。

そのため、まずはハードルの低い「資料ダウンロード」という形で情報提供を行い、顧客との接点を継続できる状態にしておくことが重要です。

例えば、SaaS導入を検討中の見込み顧客に対しては、

・自社サービスの特徴を整理したカタログ資料
・導入の手順・スケジュールがわかるガイドブック
・他社サービスとの違いを比較したチェックシート

などを用意すると、「情報収集の手間を省ける」「自社に合っているか判断しやすい」と感じてもらいやすくなります。

SaaS企業におけるSEOの進め方

ここでは、SaaS企業が成果を出すためのSEOの基本的な取り組み方をステップごとに解説します。

ユーザーの検索意図に基づいたキーワード設計

SaaSでは、導入検討者・比較検討層・情報収集層など、ユーザーの検討フェーズが多様です。それぞれのフェーズに合わせて、下記のような検索意図を分類してキーワード設計を行います。

フェーズ キーワード例 目的
認知(情報収集) SaaSとは、SaaS メリット 教育・概念理解
比較検討 SFA 比較、おすすめMAツール リード獲得(CV)
導入準備 SFA 導入方法、設定手順 ナーチャリング・LTV向上

このように、ユーザーの状態に合わせたキーワード群を分類し、検索意図に沿ったコンテンツ作りを行うことが大切です。

また、早期に成果を出すためには、キーワード戦略の優先順位を適切に見極めることが不可欠です。特にコンバージョン(CV)に直結しやすいキーワードから優先的にSEOを取り組むことです。

例えば、「SFA 比較」「○○ツール 導入事例」など、明確に検討・比較フェーズの検索意図を持つキーワードは、見込み顧客の質が高く、CVにもつながりやすい傾向にあります。「まず成果を出せるゾーン」から攻めていくことが、SEO施策を軌道に乗せるために必要になります。

SEO流入をCVにつなげるコンテンツ設計と導線最適化

SEOで得たアクセスを商談や成約につなげるには、製品LPとの連携を意識したコンテンツ設計が不可欠です。LPだけでは拾えないニーズ(例:「〇〇業界 導入事例」)はSEO記事で対応し、記事から製品ページへ導線を敷くことで、流入チャネルの多様化とCV最大化を両立できます。

例えば「CRM 導入メリット」の記事内で、自社CRMの紹介や「無料トライアルはこちら」といったCTAを自然に挿入することで、スムーズにCVポイントへ誘導できます。

このように、ユーザーが知りたい情報を得た直後に、行動を起こせる構成にすることで、離脱を防ぎ、コンバージョン率の向上が期待できます。

内部体制を整えて、効率的にSEO施策を進める

SEO対策には、サイト設計・キーワード選定・コンテンツ制作など、多くの作業工程と専門的な知識が求められます。そのため、専任の担当者を配置するなど、社内体制を整えることが重要です。

もし、他の業務と兼任して対応する場合、SEOに十分な時間やリソースを割けず、施策が後回しになる恐れがあります。

特にSaaS企業の場合、社内エンジニアが自社サービスの理解を活かして、サイト立ち上げや簡単なコーディング作業を担うことも可能です。しかし、SEOを意識したコンテンツの継続的な制作や情報更新には、マーケティングの知識や編集体制が必要となるため、専門的なリソースの確保が課題になることも少なくありません。

もし社内で十分な体制を整えられない場合は、SEO業務を外部に委託する選択肢も有効です。自社に専門部署を設ける必要がなくなるだけでなく、検索エンジンのアルゴリズム変更にも柔軟かつ迅速に対応してもらえるといったメリットがあります。

SaaS企業のSEO対策の成功事例

ここでは、実際にSaaS企業が運用している多くのオウンドメディアのなかから、SEO対策に成功した2つの事例を紹介します。

・HRソリューションラボ
・ferret Media

SaaS企業の成功事例を理解することで、実践的なノウハウや成功のヒントを得られ、自社の施策を具体化するのに役立ちます。それぞれ詳しくみていきましょう。

HRソリューションラボ

人事労務のサービスを展開する株式会社ミナジンは、オウンドメディア「HRソリューションラボ」で、企業の人事労務担当者向けに情報発信を行っています。

メディア名 HRソリューションラボ
コンセプト 人事の力で会社を「みんながいきる場所」にする
主な目的 リード獲得
ターゲット 企業の人事労務担当者
主なコンテンツ 人事労務に関するコラム記事・お役立ち資料

SEOやコンテンツマーケティングに力を入れたオウンドメディアでは、人事労務システムの導入や運用の方法などの専門的なコンテンツを提供しています。自社の知見を活かした情報を発信することで、見込み顧客の獲得を目指しました。

サイト内では「労務管理」「採用」などのカテゴリや「人事評価」「勤怠管理システム」などのタグからの検索も可能で、知りたい情報を見つけやすい設計です。

また、各コラム内には勤怠管理システムの選定ポイントや導入事例など、ユーザーが知りたい情報を無料でダウンロードできるホワイトペーパーを設置しています。あわせて、自社サービスの紹介ページへの導線も設置し、問い合わせの増加につなげています。

出典:メディアを見たお客様の問い合わせが増加

ferret Media

SaaS事業やメディア事業を手がける株式会社ベーシックは、オウンドメディア「ferret Media」を運営しています。

メディア名 ferret Media
コンセプト マーケターのよりどころ
主な目的 リード獲得
ターゲット 企業の経営者・マーケター
主なコンテンツ マーケティングに関するコラム記事・お役立ち資料

「データ分析・BI」「SNSマーケティング」といったノウハウや役立つツールなど、ウェブマーケティングに特化した記事を発信しているのが特徴です。

会員登録をするとマーケティング基本講座や役立つ資料のダウンロードができる仕組みもあり、51万人以上(※2025年5月時点)の会員数を誇ります。無料会員登録やホワイトペーパーのダウンロードなどにより、自社プロダクトのリード獲得につなげている成功事例です。

まとめ

顧客と良好な関係を築き、継続的な利用を促すような施策が求められるSaaS企業において、SEO対策は有効なマーケティング施策です。

SaaS企業がSEO対策に取り組む際は、ユーザーのニーズに沿ったコンテンツを制作することが成功の鍵です。ターゲットを意識したSEO対策の実行により、自社サービスの認知拡大や集客が見込めるでしょう。

SEO対策に関して社内リソースの確保が難しい場合、専門会社に外注するのも有効な選択肢のひとつです。知見が豊富な専門家に相談して、着実に成果へとつなげていきましょう。