5分で理解!ペルソナマーケティングとは?作り方や事例を紹介

マーケティングなどのビジネスでよく使われる「ペルソナ」とは、自社の商品やサービスを使う理想的なユーザーを具体的にイメージした架空の人物像のことです。例えば、「どんな人が自分たちの商品を必要としているのか?」を明確にするために、年齢や職業、趣味、日常生活などを細かく設定します。ペルソナを作ることで、ターゲットの気持ちや行動をより深く理解でき、効果的なマーケティング活動やサービス設計に役立ちます。本記事では、マーケティングにおけるペルソナ設計の概要や作り方、成功事例を詳しく解説します。

マーケティングに重要な「ペルソナ」とは?

マーケティング戦略を立てる際には、商品やサービスの理想的なユーザー層を定義するために年齢や性別といった基本的な属性を分析します。このターゲットに具体的な人格やストーリーを与え、まるで実在する一人の顧客のように仕立てたものが「ペルソナ」です。

こうして作られたペルソナを活用し、顧客の視点に立った施策を展開する手法が「ペルソナマーケティング」です。

ペルソナ設計の活用シーン

ペルソナを活用することで、ターゲットが本当に求めている価値や課題を具体的に理解し、それらに応じた商品(サービス)のPRや広告施策を設計することができます。そのほかにも以下のような場面で用いられています。

新しい商品・サービスの企画や開発時 顧客の行動範囲や興味、解決したい課題を分析することで、商品やサービスに必要な要素を明確にできます。
広告やコンテンツ制作時 顧客の生活スタイルや情報収集の方法を設定すると、どの媒体でどんなタイミングに広告を発信すれば良いかが見えてきます。
マーケティング戦略の見直し ユーザー視点で購買に至らない原因を分析し、改善策を立てることで、購買意欲を高める戦略を設計できます。

新商品開発では顧客の課題に合わせた要素を組み込むことで、よりニーズに応える商品を作れます。広告制作では、顧客の生活に合わせた配信方法を検討することで、効果的にメッセージを届けられるようになります。

また、ペルソナはマーケティングだけでなく、HR(人事)やサービス開発の分野でも広く活用されています。例えば、採用活動では、求める人材像を明確化するためにペルソナが使われることもあります。

ペルソナとターゲットの違い

どちらも自社の商品やサービスのユーザー像を想定する点では共通していますが、ターゲットは年代や性別などの属性で分類された広い顧客層を指します。一方で、ペルソナはそのターゲットをさらに絞り込み、具体的な一人の人物としてイメージできるように設定したものです。

  ペルソナ ターゲット
概要 ターゲット層の中から、理想的な顧客像をさらに詳細に具体化した架空の人物像 商品やサービスを届けたい顧客層の大まかなグループ
項目例 居住地・年収・趣味・家族構成・休日の過ごし方など 年代・性別・職業など
活用例 カスタマージャーニーの検討、商品・コンテンツの企画、など マーケティング戦略の大枠の策定時、広告出稿時の属性検討時、など

マーケティングでは、まずターゲットを選定し、その後、詳細なペルソナ像を描くことで、特定の顧客に響く商品開発やコンテンツ制作に活用します。ペルソナを設定することで、顧客のニーズや課題に寄り添った具体的な施策が立てやすくなります。

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4ステップ!ペルソナの作り方

マーケティングに活かせるペルソナの作り方について、以下の4ステップに分けて解説します。

1.ターゲットを明確化する
2.ペルソナ設定のための情報を集める
3.収集したユーザー情報を整理する
4.詳細なペルソナ像を設定する

それぞれ詳しくみていきましょう。

1.ターゲットを明確化する

まずは、マーケティングの対象とする商品・サービスのターゲットを明確にしていきます。ターゲットがどのような属性なのかある程度絞ることで、その後のペルソナ設定がしやすくなるためです。

ターゲットを明確化する際の主な分析手法には、STP分析や3C分析があります

STP分析では、まず顧客セグメント(対象となる顧客を年代や性別、居住地などの属性ごとに分けたグループ)を作成します。顧客グループを細分化してターゲットを明確にし、自社商品・サービスの価値や、どの立場でビジネスを行うのかを決定する方法です。

3C分析は、市場での自社の立ち位置や競合他社との比較、自社の市場におけるポジショニングなどを知るために使われる手法です。

上記のような分析手法を活用して、力を注ぐべきターゲットを決めましょう。

2.ペルソナ設定のための情報を集める

ターゲットを明確にしたら、具体的な顧客像を描けるようにするため、以下のようなユーザー情報を集めます。

・既存顧客の購買データ
・過去のマーケティング調査結果
・自社サイトのアクセス解析

情報源が多いほど具体的なペルソナを設定できます。既存店舗やSNSなどで、購入した理由や情報収集の方法などを記載してもらうアンケートを新たに実施するのも良いでしょう。

また、条件に合う代表的な顧客のなかから複数人を選んでインタビューを行い、生の声を集める方法も有効です。

その際、より多角的な分析になるよう、年齢や職業などの定量的な要素だけでなく、価値観や嗜好性などの定性的な要素も抽出しましょう。定量的な要素は顧客情報やアンケート調査などから、定性的な要素はインタビュー調査などから得られます。

3.収集したユーザー情報を整理する

ペルソナを構成するための情報を十分に収集できたら、ユーザー情報を整理します。

ペルソナ設定の際は、実在する人物を想定したシナリオを作成するため、できるだけ詳細な情報を活用する必要があります。例えば、以下のような要素をもとに整理するのが一般的です。

項目

概要

デモグラフィック

性別・年齢・職業・家族構成・年収・居住地など

サイコグラフィック

趣味・性格・価値観・ライフスタイルなど

ビヘイビアル

購買経路・購買履歴・情報収集方法など

アンメットニーズ

まだ満たされていないユーザーのニーズ

上記のような情報をもとに整理することで、ペルソナに設定するべき人物像の人柄や日常生活が浮かび上がってきます。

4.詳細なペルソナ像を作成する

整理した情報をもとに、詳細なペルソナ像を作り上げます。具体的には、以下のような項目を組み合わせてシートを作成し、ペルソナのプロフィールをまとめます。

・基本情報(年齢・性別・家族構成・居住地など)
・仕事関連(職業・役職・勤務地など)
・年収
・生活スタイル(1日のスケジュール)
・情報収集の方法
・利用しているSNS
・そのほかの情報(現在の悩み・趣味・性格・価値観・将来の目標・商品購入の動機など)

名前・性別など定量的な基本属性はもちろん、ライフスタイルや消費行動、情報収集方法などの定性的な行動属性も含み、ストーリー仕立てで作成しましょう。

ペルソナの日常生活をストーリーとして描くことで、ペルソナの経験や体験がイメージできるものになります。その際、顔写真やイラストを添付すると共通認識がもちやすく、より人物像にリアル感が出ます。

また、ペルソナと各種メディアとの関わり方を整理しておくのもポイントです。InstagramやYouTube、テレビなど、どのメディアに接触しているかについて可視化できれば、実際のマーケティング施策の指針にもできます。

なお、一度決めたペルソナでも、社会環境などの変化があれば再考が必要です。例えば、コロナ禍前後で人々のライフスタイルや行動パターンが大きく変化しました。ギャップが生じた場合には、それに合わせてペルソナを柔軟に変更していきましょう。

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ペルソナマーケティングの成功事例

ペルソナを活用し、マーケティングで成功した2社の事例を紹介します。

・カルビー株式会社
・アサヒビール株式会社

それぞれ詳しくみていきましょう。

カルビー株式会社:消費者の傾向を分析して一貫したマーケティング施策を展開

カルビーのスナック菓子「Jagabee(じゃがビー)」は、ペルソナを活用したマーケティングが成功し、大ヒットとなった商品です。

ペルソナとして設定されたのは、「文京区在住・27歳独身女性・ヨガと水泳を好む」など、健康に気を配り、おしゃれな都会的女性。ダイエットを気にする20代独身女性にアピールするため、塩分控えめで素材の味を活かした商品を開発しました。

また、パッケージは都会的なインテリアにも馴染む落ち着いたデザインにし、CMにはモデルのヨンア氏を起用することで健康的なイメージを訴求しました。

結果、ターゲット世代に響き、販売が一時中止になるほどの人気商品に成長しました。この成功は、細かく分析したペルソナに基づく商品開発と、消費者のニーズを的確に捉えたマーケティングの好例です。

アサヒビール株式会社:ペルソナの嗜好から商品のコンセプトや訴求方法を決定

アサヒビールが展開する「クールドラフト」は、ペルソナの嗜好を徹底的に分析して商品開発や訴求方法を決定した成功例です。

2,000人の消費者を対象にインタビュー調査を行い、その結果から条件を満たす10人を絞り込み、最終的に30代・40代男性を対象にしたペルソナを作成しました。ペルソナとして設定されたのは、「妻と子ども2人と暮らす44歳の自営業者」です。この設定を基に、冷たい発泡酒への強いこだわりや嗜好を商品開発の参考としました。

こうして誕生したのが、「冷たさ」を印象付ける商品名とパッケージを持つ「クールドラフト」です。2009年3月の発売後、わずか2カ月で年間販売目標(700万箱)の約35%にあたる244万箱を販売するという成果を上げました。

ペルソナを活用した具体的な分析と顧客ニーズを反映した商品設計が、この成功を支えました。

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ペルソナの解像度が低いままマーケティング活動を行っていませんか?

自社のペルソナが曖昧なまま、マーケティング活動を進めてはいないでしょうか。多くの企業では、一般的に効果があるとされるコンテンツや広告を、明確な戦略を持たずに選択してしまうケースが見られます。

しかし、ターゲット層ごとに生活スタイルや習慣、価値観は大きく異なります。顧客を十分に分析せずに立案したマーケティング戦略では、ユーザーの行動や心理を反映できず、期待する成果を得るのは難しいでしょう。

同じ30代男性会社員でも、業種、勤務時間、年収、趣味によって価値を感じるポイントや情報収集の仕方が変わります。この違いを踏まえることで、マーケティングの戦略も大きく変化します。

・適切なコンテンツの種類:オウンドメディア、動画、メルマガなど
・接触するタイミング:配信時間や曜日の工夫
・集客の導線設計:Google検索、SNS、有料広告の使い分け

例えば、不動産営業で土日勤務の男性がターゲットの場合、一般的に不動産業で休みが多い水曜の朝にメルマガを配信するのが効果的です。一方、事務職の男性なら、平日の業務を避け、休みの土日に配信する方が閲覧される可能性が高くなります。

このように、解像度の高いペルソナ設定と、それに基づく適切な手段の選択によって、ユーザーの実態に即した効果的なマーケティング活動が可能になります。

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まとめ

ペルソナの解像度が低い状態でマーケティング活動を行えば、期待する成果は得られません。多様化した顧客のニーズに応える効果的なマーケティング活動を行うために、定量的な要素と定性的な要素にもとづくリアルな人物像を作り上げましょう。

成功事例も参考に適切なペルソナを設定して、自社のマーケティング戦略に活用してください。