他社と差別化したい!コーポレートブランディングとは

多くの企業が、他企業と差別化を図りたいと考えているのではないでしょうか。そのためには、企業のイメージアップはもちろん、社会からの認知やサポートを得られるようにすることが重要です。ここでは、コーポレートブランディングの役割や効果、進め方を紹介していきます。

コーポレートブランディングとは

企業のブランドを構築し、企業全体のイメージや価値を高めることをコーポレートブランディングと言います。また、企業ブランディングとも言われています。 他企業と差別化を図るためのブランディングには、いくつかの戦略があります。製品の売り出し戦略などを考える製品ブランディングとは異なり、コーポレートブランディングは、理念、強み、従業員など企業全体の要素を扱うため、長期的な戦略となります。  

コーポレートブランディングには、製品ブランディングとは異なる役割や、期待できる様々な効果があります。ここから、コーポレートブランディングの役割と効果について、詳しく説明していきます。

 

コーポレートブランディングの役割

コーポレートブランディングの役割は、企業の立ち位置を明らかにして、社会からの認知、サポートを得られるようにすることです。ただ単にイメージアップを図るものではありません。 製品ブランディングは消費者に対して行いますが、コーポレートブランディングは株主や従業員などのステークホルダー(利害関係者)も対象とし、社会全体へ発信する目的があります。 また、敵対的M&A(企業の合併や買収)を防ぐ対策としても、コーポレートブランディングは重要な役割を果たします。有形資産の増加が難しくても、ブランドのような無形資産の価値を高めることで、時価総額をアップさせる企業が増加していると言われています。

コーポレートブランディングで得られる効果

コーポレートブランディングを行うことで、企業価値を高めるだけでなく、様々な効果が期待できます。ここから、期待できる6つの効果を紹介していきます。 1つ目の効果は、企業の成功を左右する資金調達がしやすくなることです。企業の立ち位置を明らかにすることで、金融機関や投資家からの期待が高まり、資金調達に必要な信用力へつながるでしょう。

2つ目の効果は、人材採用がしやすくなることです。日本は人口減少や少子化の影響で、優秀な人材を確保することが難しくなっています。就職先を決定する際に注目されるポイントは、財務状況や企業理念、仕事内容、報酬面などがあります。 これらの多くがコーポレートブランディングの構成要素に含まれているため、企業ブランドがしっかり構築されていれば、企業の必要とする人材が必然的に集まりやすいと言えるでしょう。

3つ目の効果は、製品ブランディングにもつながることです。企業のブランドが構築されていれば、消費者に信頼感と安心感を与えられ、製品を販売しやすい環境を作れるでしょう。

4つ目の効果は、組織文化が統一されることです。企業理念や経営層からのメッセージが従業員にも浸透することで、消費者や他のステークホルダーに向けた発信が統一されます。 このように、経営層と従業員が同じ方向を向くことで組織文化が統一され、強い組織に変わっていくと期待できるでしょう。

5つ目の効果は、従業員のモチベーションを上げることです。企業ブランドを構築することで、従業員は働く価値や意義を感じられます。自分が企業や社会に貢献しているという誇りや充実感をもつことで、従業員のモチベーションアップにつながるでしょう。

6つ目の効果は、マーケティング戦略にもなることです。同じ価格や性能をもつ商品が複数あり、消費者がその中から1つだけを選ぶ場合、企業ブランドが構築されている商品を選ぶでしょう。  

コーポレートブランディングの事例から学ぶ

さまざまな利益をもたらすコーポレートブランディングですが、実際にどのような企業が、どういった方法で企業ブランドを構築しているのでしょうか。コーポレートブランディングの事例から、成功するイメージを掴んでみましょう。

 

メルカリ

メルカリとは、インターネットを通して、家にある不用品を売ったり買ったりできるサービスです。やり取りがアプリひとつで完結するだけでなく、その累計出品数は20億品、利用者は日本国内で1750万人の大規模なフリマサイトです。

そんなメルカリでは「メルカリのはたらくを伝える」というコンセプトを掲げ、オウンドメディア「mercan」を運営しています。merucanでは、メルカリで活躍している従業員に行ったインタビュー情報をオープンにしています。企業内での立場を超えたリアルな声を、積極的に拾い上げる役割を担っています。

メルカリでは、このオウンドメディアにより組織面や人材面といった2つのブランディングを実現しています。

mercanがもたらすブランディング効果のひとつ目に、組織文化の統一が挙げられます。自分の意見が反映されるmerucanにより、従業員のモチベーション向上につながっています。また、mercanでのコミュニケーションによって、経営者と従業員の思いがひとつとなり、組織全体の地盤を固めているようです。

ふたつ目に、人材面での効果が挙げられます。merucanでは、エンジニアやデザイナー、新入社員など、さまざまな従業員が思い思いの経営ビジョンを語っています。その自由な発言や、下意上達の空気感が「メルカリブランド」としての地位を確実なものにしているようです。徹底的に構築されたブランド力をアピールできれば、同じ考えをもった人材が必然的に集まってくため、人材面での効果も大きいといえるでしょう。

ヤンマー 

日本の発動機や農機、小型船舶などの製造・販売を行うヤンマーでは、創業100周年を迎えたタイミングで、デザイン面からのブランディングに着手しました。数々の製品を手がけるヤンマーが、世界共通の企業イメージを作り出すため、ブランドコンセプトのシンボルマークを作成したのです。

ヤンマーが関連する農作の象徴「トンボ(オニヤンマ)」の羽がイメージされたシンボルマークには、次の100年への飛躍の意思が込められています。

一目見ただけで企業ブランドを認知できるシンボルマークの作成は、マーケティング戦略にもつながります。さらには、製品ブランディングの効果も期待でき、消費者に視覚的に安心感や信頼感を与えることが可能です。

ヤンマーの事例と同じように、購入を迷っている製品を見比べて「このロゴのブランドは知っているから、こちらを購入しよう」といった場面を体験した人も多いのではないでしょうか。

企業によって、ブランディング方法はさまざまです。しかし、日本の有名な企業のなかには、事例のようにコーポレートブランディングによって成功しているケースが多数見受けられるのです。

コーポレートブランディングの進め方

実際にコーポレートブランディングを成功させるためには、どのように進めていけば良いのでしょうか。「現状調査」、「ブランドの定義」、「ブランディングの実施」「認知度の検証」の4つに分けて、コーポレートブランディングのステップを紹介していきます。

1つ目のステップは、現状調査です。外部分析と内部分析を通して企業の社会的立ち位置を把握し、ターゲット層を特定していきます。企業を客観視することで、現状の姿と目指す姿の大きなずれを認識することが目的です。 内部調査では、企業の会社案内や社内報、マニュアル、過去のインタビュー記事などの社内資料を集めて分析していきます。また、経営層へインタビューを行い全社戦略や制約条件を確認することで、コーポレートブランディングの輪郭や方針をはっきりさせます。

外部調査では、従業員や取引先を含むステークホルダー調査(アンケートやインタビュー)を行います。ステークホルダー調査により、企業ブランドの現状の姿を把握し、課題や機会を見出すことにつながります。 憶測ではない事実をベースとする現状調査により、コーポレートブランディングを推進するメンバーの意識統一を図り、円滑に進めていくことも期待できます。

2つ目のステップは、ブランドの定義です。ブランド定義を、一般的にブランドアイデンティティと呼びます。 現状調査結果をもとに、企業ブランドが抱えている課題や、企業ブランドとして期待されていることが何かを分析していきます。 分析結果をもとに、企業がステークホルダーに向けて発信したい「社会的な立ち位置や姿勢」を決定します。

そして、企業の特徴、社会的役割、ビジョン、差別化、提供価値などを言語化し、それをイメージできるロゴやキャッチコピーなどのシンボルを決定していきます。 このように、発信したい概念や考えを、言語やシンボルで形づくり視覚化することで、多くのステークホルダーに認識され、企業と共有していくことが期待できます。

3つ目のステップは、ブランディングの実施です。決定したブランドアイデンティティをどのように社会へ発信していくかを計画します。現状調査で特定したターゲット層へ、戦略的に伝達できる手段を選んでいきます。 一般的な手段として、テレビや新聞などのメディア媒体や、実際に販売している商品サービス、PRキャンペーン、SNSやイベントなどのコミュニケーションが挙げられます。このような様々な手段を組み合わせて、効果的に伝達していく戦略が重要です。

また、ブランドアイデンティティを従業員に理解させるインナーブランディングも重要となります。 企業ブランドの社会目的や姿勢を理解することで、従業員の期待や誇りを生み出し、自発的な行動へとつなげていくことが必要です。そして、コーポレートブランディングに基づいた行動を定着化させていきます。

4つ目のステップは、認知度の検証です。コーポレートブランディングは長期的な戦略となるうえに、ステークホルダーに認知されるのにも数年を要する場合があります。 コーポレートブランディングを開始し一定の期間が経ってから、アンケート調査を行い検証します。進捗状況が思うような結果でなければ、進め方を改善していく必要があります。

ここまでの4つのステップを経て、企業ブランドが構築され、社会から認知されていきます。コーポレートブランディングは、長期的で大掛かりなものとなり、効果がすぐには分からないという難しさがあります。 しかし、その分、多くの効果が期待できます。コーポレートブランディングは、他企業との差別化を図り、競合する市場で戦い抜いていくための重要な力と言えるでしょう。