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ブランドエクイティを高めるブランドレゾナンスピラミッド
ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスのケビン・レーン・ケラー教授が提唱したブランドレゾナントピラミッドは「ブランドエクイティピラミッド」とも呼ばれており、商品やサービスのブランディングや販促を推進するうえで欠かせない考え方です。
ブランドレゾナンスピラミッドとは
ブランドレゾナンスピラミッドとは、ブランドエクイティ(ブランド資産)を高めるためのルートをピラミッド型に示したものです。顧客が商品やサービスを利用しはじめてから、安定的に利用するまでの顧客体験や感情を左脳的・理性的なルートと、右脳的・感情的なルートで段階的なステップを踏みながら、ブランドエクイティを最大化する活動を可視化するためのツールといえるでしょう。
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ブランドレゾナンスピラミッドが重要な理由
どの市場においても、競合になる商品やブランドが存在するものです。そのため、顧客に自社の商品やサービスを選んでもらいロイヤルカスタマーになってもらうためには、ブランドエクイティを高めることが必要不可欠になります。
顧客のロイヤリティを高め、自社の商品やサービスを継続的に利用してもらい企業の収益向上につなげることが、ブランドエクイティを高める最大の目的です。また、ロイヤルカスタマーは自社の商品やサービスを他の方に紹介してくれるため、新規顧客の獲得につながることによって、さらなる収益化に貢献する効果も期待できるでしょう。
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ブランドレゾナンスピラミッドの構造
ブランドレゾナンスピラミッドは4つのステップと6つのブロックに分かれている構造が特徴です。それぞれの内容を解説します。
ブランドレゾナンスピラミッドの4つのステップ
ブランドレゾナンスピラミッドにはブランドエクイティを高めるために、以下4つのステップを踏む必要があります。
アイデンティフィケーション
ブランドレゾナンスピラミッドの最下層ステップにあたる「アイデンティフィケーション」は、顧客が自社の商品やサービスを利用する前の段階です。つまり、この段階では顧客が自社の商品やサービスのことを全く知らない状態のため、第一印象が非常に重要になります。
ミーニング
顧客が商品やサービスを利用し始めるステップが「ミーニング」です。実際に体感することで、顧客にとっての有用性が判断され、その後も継続的に利用するかどうかを決める重要なステップといえます。
レスポンス
商品やサービスを何度か利用した顧客が、長期的に利用するメリットがあるかどうか判断するステップが「レスポンス」です。この段階で競合他社以上のメリットを感じてもらえれば、顧客のロイヤル化に近づくことでしょう。
リレーションシップ
顧客が自社商品やサービスを毎日継続的に利用する最終ステップが「リレーションシップ」です。ブランドエクイティが最大化され、ロイヤルカスタマー化が実現した段階といえます。
ブランドレゾナンスピラミッドの6つの領域
次に、ブランドレゾンナンスピラミッドを構成する6つの領域がどのようなものか、それぞれ解説します。
セイリエンス(Salience)
自社の商品やサービスが市場でどのように認知されており、どの程度思い出してもらえるのかという領域が「セイリエンス」です。第一印象や知名度、市場におけるポジションによって、ブランド認知に大きな影響を及ぼします。
パフォーマンス(Performance)
左脳的・理性的なルートの「パフォーマンス」は、商品やサービスの機能や性能への理解のことです。機能性やデザイン、ユーザビリティといった物理的な特徴から、顧客にとって価値のあるものかどうかが判断されます。
イメージ(Imagery)
右脳的・感情的なルートの「イメージ」は、自社商品やサービスに対する印象やイメージのことです。「洗練されている」「新しい」「親近感がある」など、顧客のブランドに対する認識といえます。
ジャッジメント(Judgment)
左脳的・理性的なルートである「ジャッジメント」は、自社商品やサービスが提供する価値や機能が、顧客にとって有用であるとポジティブな理性的評価が下った状態です。「便利だ」「有用である」「安全だ」といった、判断がなされた結果になります。
フィーリング(Feelings)
右脳的・感情的なルートである「フィーリング」は、「信頼できる」「好感が持てる」といった自社商品やサービスに対してポジティブな感情的評価が下った状態です。競合と機能面で比較した際に、差別化が難しい場合、どのようなフィーリングを顧客が感じているかが重要なポイントになります。
レゾナンス(Resonance)
ブランドレゾナンスピラミッドの頂点にあたる「レゾナンス」は、顧客の自社商品、サービスへのロイヤリティが最大化された状態です。自社が掲げるブランドエクイティが高まり、顧客のロイヤルカスタマー化が実現した理想的な状態といえるでしょう。
企業事例からみるブランドレゾナンスピラミッド
ブランドレゾナンスピラミッドをどのように活用したらよいか、スターバックスと伊右衛門という身近な事例で確認することで理解度を深めましょう。
スターバックスの事例
ブランドレゾナンスピラミッドの6つの領域にスターバックを当てはめると、以下のようになります。
レゾナンス:都会的で洗練された自分にふさわしいカフェチェーン |
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ジャッジメント:おいしい、誠実で信頼できる、安心できる フィーリング:心地よいコーヒー経験を体験できる、自宅や職場で味わえない解放感やくつろぎ感が得られる |
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パフォーマンス:スペシャリティコーヒー、ユーザーフレンドリー、クリーンネス イメージ:お洒落な、洗練された、社交的な、都会的な |
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セイリエンス:シアトルコーヒーを提供するカフェチェーン |
スターバックスは従来のコーヒー店とは一線を画した「お洒落な」「くつろげる」「洗練された」という非日常感をブランドエクイティに据えることで、一貫性のあるサービス展開やブランディングを実施している点が特徴といえるでしょう。顧客に「サードプレイス」を提案するという、ブランドの方向性にも一致していることがわかると思います。
伊右衛門の事例
伊右衛門におけるブランドレゾナンスピラミッドは以下の通りです。
レゾナンス:可能な限りこのブランドを買う、製品の歴史をもっと知りたい |
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ジャッジメント:品質が良い、石臼挽き茶葉と上質を活かす特別な製法、他にも薦めたい、福寿園、サントリー フィーリング:味わいがある、落ち好きを感じる、安心する |
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パフォーマンス:竹筒ペットボトル、商品名が良い、上質茶葉、天然水、価格の割には高品質 イメージ:どこでも購入できる、本格的緑茶、こだわりの茶葉 |
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セイリエンス:よく知っている、よく見かけるようになった、物語風CMが心象的 |
伊右衛門は印象的な物語風のCMと本格緑茶という2つのイメージを顧客に刷り込むブランディングを積極的に展開しています。その結果、本格的嗜好性飲料として現在の地位を確立しました。
ブランドレゾナンスピラミッドはブランディングの基本
自社商品の販促やブランディングを行う際には、ブランドレゾナンスピラミッドを活用して目指す方向性を決めましょう。ブランドレゾナンスピラミッドはブランディングの基本といえるため、この機会にぜひマスターしてください。